この夏、ニュースなどで大きく報道されていた事件のひとつに「某大手中古車販売チェーン店の不正修理請求疑惑」というのがありました。不正請求だけでなく「沿道植え込みに除草剤」とか「ブラック勤務」など未だに関連報道が続いています。
時々お客様に「あの事件の影響はある?」と聞かれます。当店には殆んど影響ありません。しかし自動車・モーターサイクル・自転車などの修理はお客様に作業内容が見えにくいだけに「お客様からどう見られているか」という不安は以前からありました。
今日の日記では、あの事件の発端となった「事故車見積り」について当店の見積り基準・見積り方法を説明します。
【事故見積書作成について】
「事故見積り書作成依頼」は近年非常に増えています。スポーツ自転車が一般的になるに従ってクルマとの事故も増えているのでしょう。事故相手の保険会社に提示する修理見積書の作成も自転車屋の重要な仕事になりつつあります。
事故見積書作成料は、当店販売車の場合は無料、他店販売車の場合は¥2,200です。
その場ですぐに見積書を発行するのは難しく、1~2日ほどお時間を頂きます。
【損傷個所は当事者が示す】
事故車が持ち込まれると、私はまず「今回の事故で傷が入った個所を全て教えてください」とオーナーさんにお願いします(”正常に動くか否か”は関係なく傷が入った個所を全て教えて頂きます)。ここで面食らっちゃうオーナーさんも多いです。「損傷個所は自転車屋が判断するものだ」と思っておられるのでしょう。だけど自転車屋はその車両の「事故前の傷の状態」「事故の状況」「事故後の傷の状態」なんて知るわけないから、事故キズの個所は当事者でないと分かりません。オーナーさんに事故キズを指し示して頂きます。
【全損か修理か】
この段階で自転車のフレームかフォークに事故キズが入っていたら、私は”全損”の見積書を作成します(”まだ走行できるか否か”は関係なく車両全損とします)。自転車はフレームの修正・補修・再塗装をメーカーで受け付けていないため傷の修復が不可能だからです。この理由も見積書に記します。また「趣味性の高い高級嗜好品であること」「事故による衝撃でフレームが本来の強度を保っていないこと」も見積書に書き加えます。
フレームとフォークに傷が無いなら殆んどの場合で修理可能なので、パーツ代と交換工賃を記した見積書を作成します。
載せる金額は全損の場合もパーツ交換の場合も定価です。
当店に金額が分からない車両・パーツの場合(オーダーメイド車・クラシック車・希少パーツなど)は見積書作成をお断わりすることとなります。
【嘘ついちゃダメ】
事故キズはオーナーさんに特定して頂き、当店はそのとおりに見積書を作成しますが、嘘をついてはダメです(ときどき「これ相当古い傷だろ…」っていうのを指し示す方がいる)。事故見積書提示後、相手保険会社のアジャスター(調査員)が事故車を見分に来て、その傷をよぉく確認します。嘘はバレます。
【補償額交渉には関与しない】
当店の仕事は見積書作成までです。相手保険会社との金額交渉には一切関与しません。よく相手保険会社から「中古相場は幾らですか?」という質問が来ますが「知りません」と答えています。「見積書の内容についての不明点」にはお答えしています。
補償額の交渉はオーナーさん御自身・オーナーさん側保険会社・オーナーさん側弁護士が行うこととなります。
【全額は支払われない】
このような基準で当店は事故見積書を作成します。しかしこの見積書のとおりの金額が相手保険会社から支払われることは稀です。”減価償却”という名目のもと大幅に減額された補償額を提示されるのが殆んどです。
「クルマと事故って得した」なんてことはありません。自転車は元通りに直らないうえ、酷い怪我を負って後遺症に悩まされているお客様も多いです。皆さん、事故には気を付けて走って下さい。
当店の場合、事故見積書作成はこんな感じなので、某中古車チェーンのような「修理費水増し」とか有り得ません。ぶっちゃけ、オーナーさんが何処の店で買い替えようが修理しようがどうでも良いんです。純粋に”見積書作成”ってお仕事だけです。
だけど自転車屋としては「事故車の見積り」っていうのは気の重い仕事なので、やっぱり皆さん事故しないように走ってください!