13/01/28

特別あつらえ

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「ブレーキが効かない」と修理の御依頼を頂きました。見るとこの自転車のブレーキは特殊な改造が施してあります。オーナーのNさんは左手が不自由なので、右レバーだけで前後ブレーキが掛けられるようになっているのです。
右STIレバーから伸びた1本のワイヤーを2方向に振り分ける分配器と、STIレバーでVブレーキを引くためにワイヤー引き量を変換する偏芯滑車を介した複雑な構造です。一方、左STIレバーからは1本もケーブルが出ていません。不具合は、ワイヤーの錆びと偏芯滑車の固着によるものでした。
今回はこのしくみをもっとシンプルにさせるため、偏芯滑車を外し、Vブレーキをカンチブレーキに変更しました。…と書くと簡単そうですが難しい作業でした。片手で前後ブレーキを掛けるのですから、「いかに軽い力でレバーを引けるようにするか」や「アウターワイヤーの取り回しをどうするか」や「前後ブレーキの効きのバランス」で手こずりました。
正直言うとこの仕事は気が進みませんでした。ブレーキは保安部品なのでイレギュラーな動かし方は不安ですし、作業にかなり時間が掛かりそうなのも想像できます。しかしこの自転車を売ったショップのメカニックは、相当に知恵を絞ってNさんの為に特別仕様の自転車を組んだのでしょう。それを考えると「よし! じゃあ俺も!」という気になります。
今回はいろんな点で学ばせて頂いたお仕事でした。

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