あまり自慢できる作業結果では無いですが「ひとつの事例」として書き記しておきます。
クランク外しの作業依頼を頂きました。「どうしても外れない。クランクとBBを破壊しても良いから外して欲しい」という御依頼です。クランクはFSAのOMEGA、このタイプは左クランクの固定ボルトを緩めてゆけばプーラー機能が働いて外れるはずなのですが、お客様によると「外れずにネジ山が潰れてしまった」とのこと。
既にクランクもBBも傷だらけだったし、”壊しても良い”と仰るし、「プーラーを使えば難なく外れるだろう」と予測して引き受けました。それに当店で販売した自転車では無いので、よほど作業時間が掛かるようだったら「すいません、外せませんでした」と諦めてしまおうと考えていました。こんな土壺にはまるとは思わずに…
まずカンパのパワートルククランク用のプーラーで試みましたが… 外れません。別のプーラーを使っても外れません。BBとの隙間を抉ってもラスペネをじっくり浸透させてもドライヤーで熱しても外れません。パークツールのクランクプーラーが変形してしまいました。完全に固着しているようです。カーボンフレームに影響するので強く引っ叩いたりは出来ません。「外してやる! ゼッテェ外してやる!」と意地になってゆくじて吉です。
そしてとうとうノコギリを使いました。エアーソーで左クランク嵌合部に刃を立てます。切り込みを入れてしまったら「すいません外せませんでした」と返却する訳にはいきません。もう必ず外さないと…
外れました! クランク交換でこんなに難儀したのは初めてです。おそらく組み立ての際に固着防止グリスなんか塗っていないのでしょう。アルミと鉄の噛り付きの恐さを改めて感じました。「やっぱりクランクはシマノ/ホローテックが良いな」と再認識した次第です。